※この文章は、ある楽曲の裏側にある物語です。
いつもの記事とは少し違う温度で書いています。
世界は荒廃していた。
灰色の空気が低く垂れこめ、視界は霞み、音さえも吸い込まれていく。
終わりを告げる前触れのような静けさが、あたり一面を支配していた。
かつては緑に満ちていたはずの景色も、今は色を失い、ただ輪郭だけが残っている。
呼吸をするたび、胸の奥まで冷たい影が入り込む。
その中心に、一本の巨大な樹が立っている。
幹は黒く、枝は空へと広がり、まるでこの闇を歓迎するかのように天を仰いでいる。
荒廃した世界にあってなお、その姿は揺るがない。
崩れゆく風景の中で、ただそれだけが確かな存在として立ち続けている。
なぜ、この世界はここまで変わってしまったのか。
かつて見ていた、豊かで眩しい景色は、どこへ消えたのか。
美しい世界よりも、何もないこの荒野を、誰が望んだのだろう。
怒りと悲しみが積み重なり、やがて個性は削られ、声はかき消された。
残ったのは、均された灰色の地面と、黒ずんだ樹だけ。
自分一人が悔やんだところで、景色は変わらない。
それでも問いは消えない。
あの時、違う選択をしていれば、この未来は避けられたのか。
後悔は静かに胸に沈殿し、重みだけを増していく。
この先に、希望はあるのだろうか。
想像を巡らせても、浮かぶのは闇に閉ざされた未来ばかりだ。
光の形は見えない。
それでも、生きるしかない。
巨大な樹は、黒い枝をさらに広げる。
闇を吸い込み、闇を養分にしているかのように。
かつては敵だと思っていたその姿が、今は別の意味を帯びて見える。
削られ、傷つき、それでも折れずに立つその幹は、
この世界で生き延びるための形なのかもしれない。
闇に染まりながらも、立ち続ける。
未来が暗いとしても、
立ち尽くすことと、立ち続けることは違う。
黒い樹は、ただそこにある。
風に揺れながら、音もなく、次の時代を待っている。
この文章を元に制作した楽曲があります。
もしタイミングが合えば、静かな時間に聴いてもらえたら嬉しいです。
塔野ミノル


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