今みたいにネット通販が当たり前ではなかった時代。
本当にちゃんと届くんだろうかと不安になりながら、家でずっと待っていたのを覚えている。
段ボールを開けた時の興奮
大きな箱が届いて、
急いで梱包を開ける。
ソフトケースのファスナーを開いた瞬間、
そこには赤くて艶のあるギターが入っていた。
写真で見ていた時よりも何倍も格好良かった。
しばらく眺めていただけで幸せだった気がする。
とにかく早く弾けるようになりたかった
初心者セットには、
チューナーやケーブル、
ピックや教則本が入っていた。
何から始めればいいのか。
どう練習すればいいのか。
全部知りたかった。
早く好きな曲を弾けるようになりたかった。
最初の壁は、いきなり現れた
まずはコード練習。
教則本を見ながら、
Cコードを押さえてみる。
でも全然うまくいかない。
指が言うことを聞かない
形が複雑で、
どこを押さえればいいのか分からなくなる。
やっと形になったと思っても、
音が綺麗に鳴らない。
指は震えるし、
押さえるだけで必死だった。
Cコードで苦戦していた頃
今思えば、
たった一つのコードなんだけど、
当時はとてつもなく難しかった。
ドレミファソラシの「ド」の時点で苦戦していた。
少しずつ慣れていった
Dコード。
Eコード。
少しずつ覚えていく。
最初よりはスムーズになってきた。
この頃は、
「意外といけるかもしれない」
と思っていた。
そして、Fコードが現れた
ここからだった。
本当の戦いは。
何だこれはと思った
人差し指一本で全部の弦を押さえる。
しかも一番押さえにくい1フレット。
無理やり形を作ってみても、
音はほとんど鳴らない。
修行みたいだった
指は痛い。
手はつりそうになる。
人差し指には弦の跡がくっきり残る。
ギターを練習しているのか、
何かの修行をしているのか分からなくなった。
Fコードが嫌いになった
当然のように苦手意識がついた。
しばらくコード練習から離れ、
単音で弾けるフレーズばかり練習するようになった。
その方が楽しかった。
本当は早くコピーがしたかった
ギターを始めたきっかけは、
好きなバンドへの憧れだった。
特に当時の自分は、
ラルク アン シエルに強い衝撃を受けていた。
「HONEY」が弾きたかった
アルバムの楽譜を買って、
少しずつコピーを始めた。
その中でも特に弾きたかったのが「HONEY」。
あのギターの音が本当に格好良かった。
でも、そこにもFコードがいた
楽譜を見る。
Fコード。
またFコード。
ずっとFコード。
本当に弾けるようになるのか
ライブ映像を見ると、
ギタリストは当たり前のように弾いている。
しかも歌まで歌っている。
当時は意味が分からなかった。
とにかく続けてみた
それでも弾きたかった。
だから練習した。
音が鳴らなくても。
指が痛くても。
少しずつ続けた。
人差し指が変わっていった
最初は柔らかかった指。
でも練習を続けるうちに、
人差し指の側面が硬くなっていった。
皮膚も厚くなった。
ギターを弾くための指になっていった。
途中でパワーコードにも出会った
パワーコードを覚えると、
急に弾ける曲が増えた。
伴奏ができる。
好きな曲が弾ける。
一気に世界が広がった。
楽しいから続いた
ソロを弾く。
伴奏を弾く。
またソロを弾く。
できることが増えるたびに楽しくなった。
気付いたら、できるようになっていた
不思議なことに、
「今日からできた」という記憶はない。
でもある日、
自然にFコードを押さえていた。
人差し指もちゃんと立っていた。
音も綺麗に鳴っていた。
あの感動は今でも覚えている
嬉しかった。
本当に嬉しかった。
できなかったことが、
いつの間にかできるようになっていた。
人の体って不思議だと思った
あれだけ無理だと思っていたのに、
続けていたら適応していた。
努力というより、
積み重ねの力を初めて感じた瞬間だった。
Fコードは終わりじゃなかった
でも、
Fコードが弾けたから終わりではなかった。
その先にも課題は沢山あった。
新しいコード。
速弾き。
音作り。
作曲。
結論
今振り返ると、
Fコードは単なるコードじゃなかった気がする。
ギターを続けられるかどうか。
最初の大きな壁だった。
そして、
その壁を越えた時に見える景色が確かにあった。
最後に
ギターは今でも難しい。
できないことも沢山ある。
でも、
あの頃Fコードに苦戦していた自分を思い出すと、
少しだけ前に進めている気がする。
これからもきっと、
新しい壁は出てくる。
それでもまた、
少しずつ乗り越えながら楽しんでいきたいと思う。

仕事から帰宅して、疲労感と頭がモヤモヤしていても、ギターを手に取って音を鳴らしだすと、スッと頭が切り替わる。
好きなフレーズを弾いたり、調子の良し悪しを確認したり、まだ弾けるかなと、思い出したフレーズを弾いてみて、気が付いたら夢中になっていく。
指の調子が良かったり、手元が軽く感じたり、音がすっきり聴こえたり等、調子が良い日はより楽しくなってくる。
家に帰って寄りかかって、楽しい気持ちに変えてくれる存在。
Fコードの苦労を思い出して、これからも何かしらやりたい技術を見つけて、乗り越えていきたいと思っている。


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